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環境学や自然についてご興味をお持ちの方には、ぜひご一読いただきたい一冊が、本書です。
「花見」の話から始まる本書には、古今東西のさまざまな文化、芸術にまつわる、人間と自然との親密な関係と、その関係を綾なす人間たちの深遠な思考が、やわらかく味わい深い言葉でもって、紹介されています。
染織家の志村ふくみさんの染織の思想、法隆寺の宮大工である西岡常一さんの思考、アーユルヴェーダや、薬草を用いる呪術医の植物との関係…占星術の文脈から、シャーマニズムの文脈から、焼畑農耕民の文脈から、北欧の神話から「風の谷のナウシカ」まで。
非常に整理されて編集されているので、専門書、学術書が苦手な方でもゆったりと読むことができると思います。
さまざまな文脈を総合しながら語り出されるのは、その観とは、植物たちと人間たちとがいかに密接な関係を築きあいながらこの星の上で生きてきたのか。そしてまた、いかに人間の文化というものが、それぞれの文化における差異を孕みながらも、自然界と交わるようにして、この星に愛を持ちながら生きようとしてきたのか、それがゆえの現代では忘れ去られたさまざまな知恵がそこにはあったのかということを見つめさせてくれる、本当にすばらしい一冊です。
話はそこだけに終わらず、著者の竹村さんはそうした植物たちの関係における情報工学をまでも視野に入れる。
単に往古に学ぶだけではなく、この現代の世界において、どのようにすれば自然界、植物たちと共になってこの星で人間たちは進化を続けていけるのか、という壮大な射程に向かって放たれる思考。
私は感銘を受けました。そうしてこの本も、私の本のなかに引用されることになりました。
なにかを知ることの意義。それのもたらすもの。ひとりの人間のなかで、それらの知たちがむすびつきながら、変形されてゆき、未来に向かう新たな思考が紡がれてゆくのか。
人に学び、自然に学びながら、この世界のことを想う方々には、ぜひとおすすめしたい一冊です。