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この何気ない日々のなかで撮られた写真たちとそして彼と彼女が書いた文章たち。どうしてこうも胸に迫るものがあるのかと、考えている。
『あなたを食べて生きてきた』の作者である世菜さんと共にZINE『推察の推察』を制作されたナルミニウムさん、東成実さんと、彼女の恋人である照井陽智さんによる本がこの本である。
角部屋
東成実 照井陽智
角部屋社
2500円+税
しかしながらここにはまたおふたり以外の様々な方々もおられ、そこには不在もまた写っている。写真は「かつてそこにあったもの」を写しだす。それはたとえどのような日常のささやかな物事であろうとも痕跡する〈眼〉がある。
カメラの〈眼〉は捉える。様々な事物を、そしてまた、日々変わりゆく時々における、微細なものを。
誰かが、誰かと、別れたり、新たに出逢ったりする。なにかがそこに置かれたり、暮らすなかで得たものや捨てられたものや失われたものなどもある。ふたりは、角部屋に、暮らした。そうして今のふたりがある。日々が、ある。その途方もなく豊穣なあたりまえさのなかで仄かに灯るものや、揺らぎ、情景を灯され、残される。そうしたものたちが、そっと、語りかけてくる気さえもするのだった。
転勤することで、離れて暮らすことになったふたり。結婚制度のもとに、苗字の問題につきあたり共に考えたふたり。
共に在ること。その、あたりまえのなかにある、様々な機微がある。写真でしか捉え得ないものが痕跡されている。言葉にしか残らないものが灯されている。そう、感じる。生活というもののその言葉にはならない、その、現実。
素晴らしい本だと、思います。
よかったら、
お手にとってご覧ください。
ナルミニウムさんにはまだ、
会えては、いないけれども。
僕は、彼女のことを、信頼します。
彼女たちの本のことも。
そして彼女らの
まだ見ぬ日々のことも。