other


土方巽さんのことは、いつからか僕のまんなかにある。
20代の半ば頃だった。
コンテンポラリーダンスの舞台音楽監督を務めながら、ステージ上で踊る人間たちの身体を、よく、観た。
舞踊家の田中泯さんのもとで、舞踏を学び、そのwsの成果発表として公開された、あんなさんという方の舞踏も観て、身体が、震えた。
舞踏する身体を、見つめる時。
僕は、客席でただ舞踏を観ているだけなのにもかかわらずに、内臓がぐにゃりぐにゃぐにゃと踊りだし、全身から、汗をかいた。観ているだけでも踊っていた。
舞踏するようにうたを歌いたいと、確かその頃、試していた記憶がある。
土方巽さんと、大野一雄さんは、今も僕のまんなかにいる。
✳︎
土方さんは言葉もすごい。こんな文章、土方巽以外には書きようがないという文章を書く。文の踊りだ。文だって踊れる。身体が、書くからだ。
土方巽さんのことを語る言葉を読む時、さまざまな方が、彼の舞踏と言葉の関係を書く。
彼にとり、書くこと、言葉を使うこともまた、彼の行いとして、重要なものだったのだろうと、僕も思う。
舞踏とは、命がけで突っ立った死体である、と、土方巽は、書いた。
大地に立つ人間の雄々しさ、獣性、動物に変わること、成ること。
イタチにまねび舞踏を創始すること。
東北の地で踊ったその身体をじかに観たかった。
▪️出版紹介文
没後30年企画。舞踏にとどまらずあらゆる分野で影響を与える舞踏神・土方巽が、いま、世紀を超えて蘇る。「病める舞姫」、「美貌の青空」ほか全著作を収録。投込冊子付=安藤礼二、田中泯。
土方 巽 (ヒジカタ タツミ)
1928年生まれ、1986年没。秋田生まれ。舞踏家。1959年、「全日本芸術舞踊協会・第6回新人舞踊公演で「禁色」を発表。以後、前衛的な舞踊作品を発表、日本のダンスシーン、演劇シーンに多大な影響を与える。