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※ 2025年6月下旬 〜 2025年7月中旬 発送予定
「金は払う、冒険は愉快だ」の重版が決まったと出版元の素粒社さんからお知らせがありました。(大好きな本なので嬉しい〜〜!)
そして、現在サイン本を予約できます。
6月8日までにこちらのページもしくは店頭にてお申し込みください。
(サイン本は6/19以降に順次届く予定です。)
わたしは普段あんまりサイン本を積極的に欲しいとおもわないタイプなのですが、川井俊夫さんのサイン、かっこいいんでみんなに見てほしいです。
気になってたけど、まだ買っていないあなた、ぜひご予約お待ちしています。
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世界は、ひかりだとおもっている。
あたたかく、やわらかく、優しく、陽気なものだけが近くにあってほしい。
そんなわけはなく、人は死ねば腐る、本や紙にはカビが生える、誰も来ない家の床は白蟻と湿気で崩れる。ウジがわき、誰かが誰かを殴り、もしくは殺し、犯し、泣いていることもわかっている。
そのことを見ないふりをしない人間が、どれだけいるだろうか。別にこの本では誰も殺されない、犯されない。たまに殴られはする。ただ、その糞溜としての現実を、糞溜と言い切れる人間が、どれだけいるだろうか。
糞溜の中の、ひかり。そこを掴まえることを、やめない。どれだけ汚らしいジジィでも、面倒臭いばばぁでも、だからこそ、よく見えるし、なぜだか愛らしくなる。
誰かが長年集めたゴミ溜めのような大量の物品の中から、根気よくひとつずつ売れば金になるものを、探す作業の描写は、ネットの膨大なブログや記事から、大量の本の中から、わたしにとって光輝くような文章を探すことに似ている気がした。年に10あればいい。もっと少なくてもいい。この本が出る前の素粒社さんでの連載note「金は払う、冒険は愉快だ」はまさにわたしにとっての、そういうものだった。
たくさんの物の中で、ひかっているなにか。
あなたにとって、この本がそういう本かどうかは知らないけれど、わたしにとっては、そんな文章でした。
とか、うまくまとめられたらいいけれど、なんだか最後はすこし突き放された気分もあって、でもたぶんそれでいいんだろうな、とも思う。
地べたに座って読んでいたら、尻を蟻に噛まれた。ズボンもパンツも突っ切ってきた蟻の顎。ムヒを塗ればもう痛くない。ムヒが切れればまたひりひりと痛い。
(みき)
▼出版社より
川井俊夫[著]
金は払う、冒険は愉快だ
カテゴリ 小説
定価 1,980円(税込)
判型 四六判変型
製本 ハードカバー
頁数 208頁
ISBN 978-4-910413-11-2
装丁 川名潤
写真 佐伯慎亮
発行日 2023.9.13
内容紹介
「俺はこの町で一番頭が悪く、なんのコネやツテもなく、やる気も金もないクソみたいな道具屋だ」
関西某所のとある古道具店。その店主は、かつてブログが登場する以前のインターネットで多くの読者を魅了した伝説のテキストサイトの著者だった――中卒、アングラ商売、アルコール依存症、ホームレスなど破格の経歴をもつ道具屋店主による、金と汗と汚物と愛にまみれた“冒険”の数々を、唯一無二の文体でつづった痛快私小説。
「俺だけのルールがある。俺専用のやつがな。誰だってそうだろ? 俺たちは世界のすべてを全員で共有してるわけじゃない。たまに交錯したり、部分的に共有してるだけだ。だから自分の世界を生きるのには、自分だけのやり方がいる。他のやつのやり方じゃダメなんだ」