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川瀬 慈『見晴らしのよい時間』
Book design:木村稔将
表紙・挿画:平松麻
発行:赤々舎
Size:H210mm x W148 mm
Page:152 pages
Binding:Hardcover
Published in June 2024
ISBN:978-4-86541-182-9
パンデミックや戦渦の時代 ──
足を止め、耳を澄まし、向かい合う、見晴らしのよい時間。
イメージの生命と共振し、
すべての境界が融解した場所に立つ
遠く離れた旅に出遭う人々の在りよう、周縁にも想いを凝らし、存在の痛苦、創造性、したたかさを抱き込みながら、その交感から立ち上がる詩を、映像や文章として作品にしてきた映像人類学者 川瀬慈。
本書は、長く続いたパンデミックの時代に、気ぜわしい日常のなかで希薄になりつつあった"イメージの生命"とのつながりを再び確かめ、その聖域の奥へ奥へとイマジネーションの潜行を試みることから生まれた。
日々の営みのあちこちにその入り口を持ちながら、人が太古より祈りや歌を通しても交流を重ねてきた、見えるものと見えないものの真ん中に息づくその場所へ──。洞窟壁画を模写した水彩画、歌、エチオピア移民のコミュニティ、イタリア軍古写真との遭遇── イメージの還流に揺さぶられながら、著者の野生のまなざしは、見晴らしのよい時間へと通貫していく。
ちりばめられたイメージの神話の種子に、平松麻氏による挿画も息を吹き込む。
イメージの生命と共振しながら、この時代にさらなる歩行を促す、祈りと生命の兆したち。
「イメージは生きている。私の内側の感覚や記憶と溶融し、様々なかたちで世界にあらわれ出ていく。それはまた、あなたのまなざしや息吹を受け、新たに芽生え、時空を超え、自らの生命をはてしなく拡張させていく。」
地軸の揺らぎ
見晴らしのよい時間/獣がかじるのは/君の歩行
川に沿って
イメージの還流/線の戯れ/どんぼらの淵
白い闇
ムジェレ/さくら荘のチュルンチュル/楽園
神話の息吹
虹の蛇/乳房からしたたる涙/影の飛翔/宴
歌へ
ちょんだらーに捧ぐバラッド/打てばよい/歌へ〔三つの書評より〕/私は歌
イメージの生命
アビシニア高原、一九三六年のあなたへ
〔対談・イメージの生命〕
アビシニア高原、一九三六年のあなたへ ─ イタリア軍古写真との遭遇
川瀬慈 × 港千尋
川瀬 慈(かわせ いつし)
1977年生まれ。映像人類学者。国立民族学博物館教授。エチオピアの吟遊詩人、楽師の人類学研究を行う。人類学、シネマ、アート、文学の実践の交点から創造的な語りの地平を探求。
主著に『ストリートの精霊たち』(世界思想社、2018年、第6回鉄犬ヘテロトピア文学賞)、『エチオピア高原の吟遊詩人 うたに生きる者たち』(音楽之友社、2020年、第43回サントリー学芸賞、第11回梅棹忠夫・山と探検文学賞)、『叡智の鳥』(Tombac/インスクリプト、2021年)。