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内容紹介
大阪西成で地元のおばあちゃんたちと立ち上げたファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」でも注目される、 アートとファッションを架橋してきた気鋭の美術家による初単著。
人と装いの新たな関係性をひらく〈ファッションデザイナー〉宣言。
・偶然出会った人と服を交換するプロジェクト《セルフ・セレクト》
・世界各地の巨大な喪失物を、市民と集めた古着で再建する《オーバーオール》
・仕事着についてのインタビューから抽出した「言葉」を、子どもたちが古着をもとに「形」として作り出す《ことばのかたち工房》
etc.
「装い」が閉ざしてきたコミュニケーションを、装いによって取り戻す。他者との関係のあり方を揺さぶる新たな実践。
尖った親密、不器用なハプニング。
装いをゆさぶると、社会が転がっていく。
推薦・伊藤亜紗氏
複数の共同体に属し、複数のアイデンティティをもって生きることが求められる近代市民社会にとって、装いは人付き合いに安心感や信頼感を付与し、コミュニケーションを円滑にする媒体として機能している。しかし、物理的に人の身体を覆う装いは、意識的であれ無意識的であれ、人が身を偽ったり役割を演じ分けたりすることを可能にしている。つまり、装いはある種のコミュニケーションを担う一方で、あり得たかもしれない別のコミュニケーションを遮断しているのではないか。少年期に抱いたこのような実感から、この「壁」としての装いを取り払うことに私の関心は向かった。この関心が今も尽きていないのは、文字通り装いを取り払って裸になることも、「壁」に新たな装いを与えることも、問題を本質から遠ざけてしまうという魅力的な困難に直面したからである。そこで、実践の過程で私は次のような仮説を導いた。すなわち、装いという「壁」に亀裂を生じさせるためには、装いを排除したり覆い隠したりするのではなく、既にある装いの状況にしっかりと身を置き、それを内から食い破ろうとするコミュニケーションの実践にこそ可能性がある。
(本書「研究の目的」より)
●目次
序章
研究の目的
本論の立場
本論の構成
第1章 研究動機としての装いとコミュニケーション
装いの概念
装う理由──起源と現状から
装いにおけるアイデンティテ
装いにおけるコミュニケーション
研究動機
第2章 実験場所としてのワークショップと芸術
方法としてのワークショップ
問題意識とワークショップの親和性
ワークショップの背景と意義、問題点
方法としての芸術
問題意識と先端芸術表現科の親和性
作り手と受け手の関係──方向から双方向へ
脱芸術の可能性
第3章 創造現場としての日常
既にある身体と状況から創造へ
装いによる「活動」のコミュニケーション
第4章 状況を内破するコミュニケーション行為としての装い
《ことばのかたち工房》
《ことばのかたち工房》の背景
《ことばのかたち工房》の概要
ワークショップとの比較
分節化された社会空間をつなぐ
途絶したコミュニケーションの回復
《オーバーオール》
《オーバーオール》の背景と概要
《オーバーオール》における「作品」と「活動」
《オーバーオール:上野大仏》の背景と概要
既にある身体と状況から創造へ─《オーバーオール:上野大仏》の実践から
《オーバーオール》の循環─《人間の家》と《ピープルズ・ハウス》
《家族の制服》
《家族の制服》の背景と概要─《コスチューム・プレー》の実践から
既にある身体と状況から創造へ─《家族の制服》の実践から
《セルフ・セレクト》
《セルフ・セレクト》の背景と概要
既にある身体としての普段着
装いによる「活動」のコミュニケーション─《セルフ・セレクト・イン・パリ》の実践から
第5章 グローバル化時代におけるコミュニケーション
ナイロビ・アートプロジェクトの背景 ─ ワークショップとしてのアフリカ体験
装いによる「活動」のコミュニケーション─《セルフ・セレクト・イン・ナイロビ》の実践から
既にある身体と状況から創造へ─《オーバーオール:蒸気機関車》の実践から
人間的に生きる創造性に向けて
終章
あとがき