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異界への旅 世界のシャーマニズムから臨死体験まで / ヨアン・ペテル・クリアーノ 桂芳樹 =訳

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先日のことだった。とはいえ、その先日とはいつのことだったか。僕は日付をうまく記憶できない。うちのじいちゃんが、死んだ。じいちゃんは、ずいぶんと長生きができ、それは僕には、じいちゃんは僕ではないので僕が満足しても仕方がないが、長生きしてよかったねぇと思いながら、見送った。じいちゃんはこの世にあるものではなくなった。僕は人間の葬式に初めて出た。葬式とはこういうものなのだなぁと感心しながらその一部始終を、できうるだけよく観て知りたかったから、その意味ではすごくよく集中をした。 ⁡ 棺に入るじいちゃんの顔は綺麗に死化粧を施されていて、ぴかぴかに綺麗だ。綺麗すぎてちょっとよくわからなかった。これははたしてじいちゃんなのかが、よくわからなかった。じいちゃんだったその体のなかで表に出ている顔、それから、頭にふれた。冷たく冷やされていて人肌だけど人のぬくみはもうなかった。当たり前だ。人間も死ねばそうなる。 ⁡ けれど僕はなんというかやっぱり「もうここにはじいちゃんはいない」のだと直覚した。僕は長らく霊魂や神やら仏やらをあまり確かなものとしては信じなかった。けれどこの頃考えを改めはじめている。それはでも単純にいるとかあるとかいないとかないとかそんな簡単に言える話ではない。そのあたりのことについてはよくよく体験、〈体験〉というのは観想やその他ヴィジョンも含めてだけれどもそれらを〈観て〉〈聴いて〉〈ふれて〉考えている。 ⁡ じいちゃんは死にあの体のなかにはもういない。ではあれから出たものはどこにいった。そのことなどを考え続けている。ばあちゃんもずいぶん歳老いて今では認知症である。認知症というものについても僕は前から考えているのだけれど、確かに記憶が想起できなくなり失われるのは忘れられる側としては寂しいのだけれども、でもけして絶対的に悪いことではないのだとは、はたから見ると思う。なったことはないから当事者としてはわからないのだけれど。でもたぶん、忘れることや思い出せなくなることでの〈解放〉というものもあるのだ。僕から観ると。 ⁡ 人は生きてきたものを、憶えていることができる。忘れることができる。忘れることができるというのは、そしてまた、もう憶えられなくなるということのうちには、もうたくさんの苦しみや悲しみを感じなくなることも含意される。ストレスが溜まり続け日常が強く苦悩に満ちたものだった人間にとり、そうした苦悩の情念から解き放たれることのうちには〈幸福〉もある。ともすると僕はあえてそういう言い方をするのだけれども、生体におけるそうした苦しみとの関係からの解放として生じてくる忘却強制作用のようなものとしても思い出せなくなる脳内構造の変容形象は、起きうるのではないかという仮説をもつ。それは直覚にすぎないので実験という調査研究がもちろん必要なのだけれども、僕は病気というものを制作するそうした生体の歪みや苦しみというものがそこに大きく寄与するのではないかという大きな思考の構造をなんとなく直観する。どうなのだろうね。 ⁡ ばあちゃんのすがたを久々に観たら、車椅子に乗るばあちゃんのすがたは天に向けてすこし粒子状に溶けていた。空に溶けているそのすがたを観て、ああばあちゃんもずいぶん長く生きたものなあと感慨深く思った。どうして天に召されるというふうに言葉は表象するのか。それは現に人間の体は空に向けて溶解するからだ。それを僕は歌うなかで感じてきたものだ。なぜ粒子になり天のほうへと光と化し溶けているんだろう。谷川さんの最晩年の詩を読む時にもやはり天にむかって書き手のからだが溶けている。ああ詩にもあの微粒子状態はあらわれるのだなあと虚空へという彼の詩集を読んだ。 ⁡ 異界。こことは異なる界。たぶん、いろいろな界があるだろうね。生きているものの、また、生きてはいないものたちの。それぞれの、界への旅。 ⁡ そんなことを思いながらこの本をふと。読みたいなあと思っていた。読もうかな。 ⁡ ももせ ⁡ ✳︎ ⁡ めくるめく異世界探求史! ⁡ ギルガメシュの冒険、オシリス神の死と再生、黄帝の昇天、 ラーマクリシュナの恍惚体験、オデュッセウスの遍歴、 エノクの黙示録、ダンテの『神曲』… ⁡ 神話・伝説・宗教に見られる数多の「この世の外」の体験は、 古代シャーマニズムから発する異界探求の霊魂の旅でもあった。 それは、現代の体外離脱、臨死体験、幻覚剤による変性意識、 そして多次元世界の研究にまで連綿と通底している。 ⁡ [目次] 頌辞…ローレンス・E・サリヴァン 序論 第1章 四次元探求のための歴史家の旅支度 第2章 遊離霊魂は遊離霊魂を求める…シャーマニズムの輪郭 第3章 暗黒の財宝…メソポタミア宗教の永世希求 第4章 人形・劇場・神…古代エジプトの死後生 第5章 中国道教における鶴駕、霊魂飛翔、幽婚説話 第6章 心への旅…佛教と三界流転 第7章 熱狂から霊的幻視へ…古代イランの霊魂離脱 第8章 ギリシアの巫医 第9章 七つの神殿と神の戦車…メルカーバーからカバラまでのユダヤ神秘主義 第10章 惑星間旅行…プロティノスからフィチーノに至るプラトン的宇宙周航 第11章 天界帰昇の極致…ムハンマドからダンテへ 結論 ⁡ ✳︎

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