




























白から黒へためらいながら歩いて行って
眼から魂へ一瞬で飛ぶ
でも心は気づかない
自分が誰の夢を証ししたのか
「キチムは夜に飛ぶ」に寄せて うつってる より 谷川俊太郎
「キチム、キチム、キチムは よるに とぶ」
夢と現実が交錯する2歳の長女が、あるとき口ずさんだ。
キ、チ、ム。
耳慣れない響き。まるで呪文のようだ。
「きちむ」は「吉夢」。
「縁起の良い夢」「幸先の良い夢」という意味があることを後に知った。
この言葉を当時の彼女が知る由も無く、突然口にしたこの言葉が、
未来のお告げのように、朧げだけれど確かな明かりに見えた。
吉夢のイメージは、
毎日繰り返される日常、時に味わう非日常の断片をすくい続ける。
これまでもこれからも。
私は何を見るのだろう。
(作家テキストより)