










〈陸と海、定住と遊動、生と死、虚構と現実、セクシュアリティ…〉
──境界線が溶け合うとき硬直した世界に未来の風景が立ち上がる。
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人は避けがたく、ほんの気まぐれな偶然から、ある者は生き残り、ある者は死んでゆくのです。巨大な災害のあとに、たまたま生き残った人々はどんな思いを抱えて、どのように生きてゆくのか。思えば、それこそが人間たちの歴史を、もっとも深いところから突き動かしてきたものかもしれません。(本文より)
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いくつもの不条理なできごとの底知れぬさみしさを抱えて、それでもなお生きるための思考。
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【目次】
夜語りの前に
■災間を生きるために
■中世の訪れを予感し、抗いながら
■不安は数量化できない
第一夜……しなやかにして、したたかに。汝の名は
■そのとき、友は巡礼に
■津波の痕を訪ねて
■世界の終わりのような
■幽霊と出会うとき
■生きとし生けるもの、すべての命のために
■山野河海を返してほしい
■いのちの思想を紡ぎなおす
第二夜……東北から、大きなさみしさを抱いて
■被災体験に触れる
■なぜ、わたしが生き残ったのか
■人間の根源的な無責任について
■その理不尽に折り合いをつけるために
■巨大な体積をもったさみしさ
第三夜……渚にて。潟化する世界のほとりで
■潟化する世界に出会った
■海岸線は揺らぎのなかに
■人間という原存在への問い
■無主の海からみんなの海へ
■海のかなたから訪れしもの
第四夜……民話という、語りと想像力のために
■おれは河童を見たことがある
■大きな真っ白い鳥が飛んだ
■奇譚が遠野と会津を結びなおす
■狐に馬鹿にされた、という
■民話的想像力によって、布を織る
第五夜……遊動と定住のはざまに、生きよ
■心の考古学は可能か
■あらたな飢えと村八分の時代に
■われらの内なる山人
■定住革命のはじまりに
■遊動という離合集散のシステム
■住まうことと建てること
■妬みや恨みを抱えこんで
■分裂病親和性と強迫症親和性
■あらたな逃げられる社会は可能か
■あとがき
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著者紹介
赤坂 憲雄(あかさか・のりお)
1953年、東京生まれ。学習院大学教授。専攻は民俗学・日本文化論。
『岡本太郎の見た日本』でドゥマゴ文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)受賞。
『異人論序説』『排除の現象学』(ちくま学芸文庫)、『境界の発生』『東北学/忘れられた東北』(講談社学術文庫)、『岡本太郎の見た日本』『象徴天皇という物語』(岩波現代文庫)、『武蔵野をよむ』(岩波新書)、『性食考』『ナウシカ考』(岩波書店)、『民俗知は可能か』(春秋社)など著書多数。