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「春光呪詛」を催してくれた瀀さんによるzine『ふるえ』。web shopでのご購入では、表紙の絵は選べません。任意でこちらで選び送ります。
◾️作者、瀀さんによる紹介文◾️
書くこと、共に生きること。開くための文章。
新しくzineをつくりました。
『ふるえ』
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ゆっくりと変化している何か。共にいること、話すこと、聞くこと。どれも、互いにそのままで居続けることはできない。それぞれの感じ方、暮らし方のズレ、思い出すこと、異なるものと関わろうとすること。意図の有無に関わらず、その前後で、在り方は変わる。
喧嘩した後も、そのことをはっきりと思い出せなくなっても、その前の感じ方を続けることはできない。世菜さんにとっての性加害という出来事を、過去とか現在とか未来といった時制で考えることはできないということ。聞くということは、聞く耳を持つことでも、体系的に把握することでもなく、生身で、巻き込まれるということ。部屋には光と風が必要だということ。家具は消耗品ではなく、固有の重みを持っているということ。理解、には至らずとも、共に変わり続けていること。
気づくことは、感じ直すことは、共に過ごすことは、変わることだ。書くことも同じ。世菜さんの今回のzineもその過程だった。書くことで、考える。書くことで、「私」の在り方が変わっていく。生活は気づくように、書くように、紡がれていく。
(本文より)
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自分自身の内側を掘り進んでいくような、沈むような時間を書いた、前作の『摇曳』。
今作は、その土壌を足裏に感じつつ、様々な出逢い、生活の変 化などを通して、渦巻く風に巻き込まれながら、共にいることに開いていくzineになっています。
最後には、今後進めていきたいプロジェクトについても。
是非、多くの方に読んでいただきたいです。
◾️百瀬雄太の紹介文◾️
「春光呪詛」の前に読み書いた文を、以下に。
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ふるえという題をもつzine。来週の20、21日に庭に居てくれて「春光呪詛」を齎らし催してくれる瀀さんの書物だ。僕と瀀さんには似たところがある。もちろん2人の人間たちには互いに全く異なるものらも生きているがそれでもなおその近しさも、想う。思う。
瀀さんの『揺曳』という一個前のzineも拝読した。凄まじい書物だあれはまた。「春光呪詛」を共に催してくれる世菜さんのいちばん新たなzineである『はなせなかった』もおそろしく鮮烈な書物だけれども、そう、来週庭文庫に来てくれる2人は、かくひとたちであり、かくには書くや描くや掻くやその他の言葉も、そこには含まれ、そうしてそのような言葉で現わすことが躊躇われるくらいには生きる。生きる。居る。命をつんざきながらかくをする方々である。僕は彼と彼女のことを、敬愛する。あのようにつくり生きるひとたちがいることを僕は想わずには、いられないのだ。とても。そうだ。
想うのはきっとそこにたまふりが起き、共振する、たましいたちが、いるためだ。たましいのなんたるかを僕は、明瞭に知るわけではないが、それでもなおそれをたまと呼びたましいと呼ぶことを僕のいのちは、厭わない。それは、確かなものとして、ふるえる。
ふるえあうものらが同じ場所にある。いる。読む以前、このzineを贈りいただいた時にからなぜだかは知らないがこれは世菜さんと共に居るをしたzineなのだろうと思いいた。なぜなのか。わからない。でもそうだ。孤と孤とが円球を描くかにして共にふるえ居る。共に生き暮らす彼ら。そしてまたそのただひとりの孤を孤として孕み産まれ落とした父親と母親もいる。父についての似たところ、それはその彼の父親のもつのだろうものと瀀さんがもつだろうものと、それから世菜さんがそこにふるえ引き渡し引きずり出すものと、それから…、生身の肉の塊として側に居る生きものではなくとも我々は互いに、ふれ、わかち、ふるえあえるのだ。それは片一方から手渡された書物の書き手からのふるえを享けることでもまた。そうだ。書く。そうしてその言語の波動が誰かをまたもふるわせる。実のところきっと人間などよりも遥か以前にあたる場所なのだ。風が吹く。その場所は。およそ生類の産まれる前からこの世には風が吹いたろう。その風を観たものがいた。もういなくともその風のふるえあいには億千万のこの移り世のあまねく実がふるえあい共にある。そこでかく。そこが、かく。そうして生きるのだ。まだ死ぬにははやい。われわれがわれわれとしてのそれぞれの弧を隣線させわかちもつ。はなし、つながり、接着する、きき、わからず、沈静するがそれでもなお。それでもなお。共に、生きる。そうやって彼は言葉を他に開きだす。ただひとりの言葉の波が強く渦巻き、その果てに。そしてその共にある彼女の言葉はさらなる弧へと。弧から他へ─他から弧へと。共に鳴りながら変わってゆく。つくりつくられつくられあう。居るからだそこに。共に。あるからだ。ここに。あすこにも。そちらにも。ただのふるえ。風。
百瀬雄太