




葉々社では、海外文学の裾野を広げるために新たに「小さな海外文学」というシリーズをはじめ
ます。本シリーズは、おもに海外文学に触れてこなかった読書家の方たちを対象に、短篇を2〜3篇収録し、気軽に手にとってもらえるように工夫しています。
シリーズ第1弾&第2弾は、柴田元幸さんの翻訳による2作品になります。
『ウォートン怪談集』は、3つの短篇を、『ロングパドル人間模様』は、『人生の小さな皮肉』
という短篇集に収録された作品で、「短篇集内短篇集」です。
複雑さとリーダビリティのバランスが絶妙な怪奇小説集
ぐだぐだ煮えきらない物言いを続けてしまったが、要するに何を言いたかったかというと、ここに収めたウォートンの幽霊譚三本を読むにあたって、もちろんどう読もうと読者の自由なのだが、事実を割り出さないといけないというプレッシャーを感じる必要はない、ということである。「小間使の呼び鈴」であれば一介の使用人である病
み上がりの小間使が女主人や男主人に対して感じる感情の起伏に、「夜の勝利」なら秘書として他人に依存して生きないといけないがゆえに何とも屈折した主人公の心理の揺れに、まずは寄り添ってみるのも悪くないと思う。 (訳者あとがきより)
[著者プロフィール]
20世紀前半に活躍したアメリカの作家。ニューヨークの名家に生まれ、アメリカ東海岸の上流階級のふるまいを内側から知る強みを活かし、社会的権力を維持していく人々の冷酷さ、権力に時に抗い時に押し潰される人々の栄光と悲惨をリア
ルに描き出した。怪奇小説の名手としても知られる。第一次世界大戦中はパリで難民や失業者のために尽力。代表作に『歓楽の家』(1905)、The Custom of the Country(1913、未訳)、『無垢の時代』(1920、女性として初めてピュリツァー賞を受賞)など。